さて、3DCADデータを元に、ミニチュア模型を3Dプリントしたくなることって、ありませんか?
そんなとき、単純にモデルを縮小すると、細かいディテールもそのまま縮小されてしまうので、エラーが出てプリントできなかったり、プリントできても脆すぎて実用に耐えなかったりします。
こうなると、エラー箇所を修正するより、いちから縮小モデルのデータを作ってしまった方が早いかもしれません。
うーん、簡単なスケールモデルを手間なく作れないかなぁ。粗くていいからさ...。
今日は、そんなときにぴったりのテクニックをご紹介します。
さて、やることはタイトルの通りです。
CADモデルをボクセル(ドット絵の3D版)に変換して、解像度を無理やり落とすことで、プリントの邪魔になる微小構造を埋めてしまおうという作戦です。
使うツール
使うツールはこの3つ
- Online Voxelizer
今回の肝です、Obj形式やStl形式の3Dデータを、ボクセルデータに変換するツールです。処理はローカルで走るので、能力は自分のPCのスペックによります。
3Dプリント用にSTLファイルを調整できるソフト
- 3Dプリント用に配置やサイズを調整できるソフトなら、なんでもOKです。普段使っているのがFlashforgeのプリンターなので、Flash Printを使います。
3Dプリンターorプリントサービス
- こちらも、手持ちのプリンターや各種プリントサービスなんでもOKですが、ボクセルモデルには粉体焼結のプリントが向いていると思います。お手軽感とコスト重視で、DMM Makeのナイロン素材を使おうと思います。
Online Voxelizerのつかいかた
元データを用意する
プリントしたいデータを、あらかじめObjまたはStl形式に変換しておきましょう。 曲面のあるデータは、ポリゴン分割数多めに
変換するにあたって、3DCADを持っていなければ、対応ファイル形式の多いAutodesk Fusion360などを使うといいでしょう。個人利用なら無償で使えます。
手元にちょうど良いCADデータがなかったので、sketchfabで公開されているパブリックドメインの3Dモデルから、良さそうなものを探してみます。
スミソニアン博物館提供の、アポロ11号司令船のモデルが良さそうです。
sketchfab.comCADデータではありませんが、スイッチひとつひとつまで、かなり細かく再現されているので、プリントの難しさ的には同じってことで。
Online Voxelizerで開く
データを用意できたら、Online Voxelizerの「Open file」ボタンを押して、ファイルを開きます。
すると、すぐにプレビューが表示されるはずです。初期状態は結構粗めです。
プレビューの下のスライダーで、解像度を調節できます。数値は長辺方向のボクセル数です。
解像度の上限は、ページのURLに&res=解像度
を付けることで変更できます。どこまで行けるかはPCのスペックによるようなので、様子を見ながら少しづつ上げていくと良いでしょう。
ちょうど良い解像度はどれくらい?
さて、この作業の目的は、解像度を無理やり落とすことでしたが、どれぐらい落とせば良いでしょうか?
ちょうど良い解像度を求める式はこちら。
- プリントサイズ(長辺):スケールモデルの場合は、
実寸(長辺)×スケール
を入れます。 - 最小先端形状:突起や板など、支えのない部分を安全に造形できる最小サイズです。使うプリンターや素材による指定に合わせましょう。DMMのMJFの場合は0.8mmだそうです。
- 解像度(長辺):Voxelizerのスライダーで指定する解像度です。
たとえば、長辺4cmでプリントしたい場合はこう
この解像度をURLに入れて
https://drububu.com/miscellaneous/voxelizer/?out=stl&res=75
スライダーを右に振り切れば、ボクセル変換は完了です。
右下に2つある小さいスライダーを両方とも右に振り切ってから、「save as stl」を押してSTLファイルをダウンロードしましょう。
小さいスライダーは、左がシェルの厚み、右がボックスの大きさです。
※2020/3/16時点では、ChromeだとUIがうまく表示できないようです。SafariとEdgeなら動くことを確認しました。
プリント用にリサイズする
出力データは長辺が100mmになっているので、実際プリントするサイズに変更しましょう。ここではFlashprintを使いますが、3Dデータのスケール機能があるソフトならなんでもOKです。
長辺を4cmにしたいので、STLファイルを開いてモデルを選択し、「スケール」のメニューで、いちばん数字が大きい軸を40mmにします。
そうしたら、「名前を付けて保存」から、拡張子を「.stl」にして保存しましょう
DMM makeでプリントしてみる
※あらかじめDMMのアカウントを作って、ログインしておいてください。
DMM makeのページを開いて
このボタンを押して、さっき作ったデータをアップロードします。
自動でデータチェックしてくれるので、完了するまでしばらく待ちます。
チェックを通るとこんな表示になるので、「注文に進む」を押しましょう。
すると注文画面に行くので、ここでそれぞれの素材の見積もり結果を確認できます。
MJFを選ぶと1,717円とのこと。あとは普通の通販と同様、送り先や支払情報を入れていけば注文できます。
この記事を書くためだけなので、ちょっと躊躇する値段ですが、まあいいでしょう。
ポチッと。
プリント結果は
そうして待つことちょうど一週間、届きました!
直径4cmのアポロ、とっても可愛いです。
ちゃんと中の構造もそれっぽくプリントできていますが、暗くて見えませね。
もうちょっとディティールがわかりやすいモデルにすれば良かったなぁ...。
以上、複雑な3Dモデルを、ボクセル変換経由で手軽にミニチュア3Dプリントする方法でした。