3DCADデータをお手軽にミニチュア3Dプリントする話―ボクセル化変換して無理やり印刷―

さて、3DCADデータを元に、ミニチュア模型を3Dプリントしたくなることって、ありませんか?

そんなとき、単純にモデルを縮小すると、細かいディテールもそのまま縮小されてしまうので、エラーが出てプリントできなかったり、プリントできても脆すぎて実用に耐えなかったりします。

こうなると、エラー箇所を修正するより、いちから縮小モデルのデータを作ってしまった方が早いかもしれません。

うーん、簡単なスケールモデルを手間なく作れないかなぁ。粗くていいからさ...。

今日は、そんなときにぴったりのテクニックをご紹介します。

さて、やることはタイトルの通りです。

CADモデルをボクセル(ドット絵の3D版)に変換して、解像度を無理やり落とすことで、プリントの邪魔になる微小構造を埋めてしまおうという作戦です。

ja.m.wikipedia.org

使うツール

使うツールはこの3つ

  • Online Voxelizer
    • 今回の肝です、Obj形式やStl形式の3Dデータを、ボクセルデータに変換するツールです。処理はローカルで走るので、能力は自分のPCのスペックによります。

      webgl.souhonzan.org

  • 3Dプリント用にSTLファイルを調整できるソフト

    • 3Dプリント用に配置やサイズを調整できるソフトなら、なんでもOKです。普段使っているのがFlashforgeのプリンターなので、Flash Printを使います。
  • 3Dプリンターorプリントサービス

    • こちらも、手持ちのプリンターや各種プリントサービスなんでもOKですが、ボクセルモデルには粉体焼結のプリントが向いていると思います。お手軽感とコスト重視で、DMM Makeのナイロン素材を使おうと思います。

Online Voxelizerのつかいかた

元データを用意する

プリントしたいデータを、あらかじめObjまたはStl形式に変換しておきましょう。 曲面のあるデータは、ポリゴン分割数多めに

変換するにあたって、3DCADを持っていなければ、対応ファイル形式の多いAutodesk Fusion360などを使うといいでしょう。個人利用なら無償で使えます。

www.autodesk.co.jp

手元にちょうど良いCADデータがなかったので、sketchfabで公開されているパブリックドメインの3Dモデルから、良さそうなものを探してみます。

スミソニアン博物館提供の、アポロ11号司令船のモデルが良さそうです。

sketchfab.com

CADデータではありませんが、スイッチひとつひとつまで、かなり細かく再現されているので、プリントの難しさ的には同じってことで。

Online Voxelizerで開く

データを用意できたら、Online Voxelizerの「Open file」ボタンを押して、ファイルを開きます。

すると、すぐにプレビューが表示されるはずです。初期状態は結構粗めです。

プレビューの下のスライダーで、解像度を調節できます。数値は長辺方向のボクセル数です。

解像度の上限は、ページのURLに&res=解像度を付けることで変更できます。どこまで行けるかはPCのスペックによるようなので、様子を見ながら少しづつ上げていくと良いでしょう。

ちょうど良い解像度はどれくらい?

さて、この作業の目的は、解像度を無理やり落とすことでしたが、どれぐらい落とせば良いでしょうか?

ちょうど良い解像度を求める式はこちら。

  • プリントサイズ(長辺):スケールモデルの場合は、実寸(長辺)×スケールを入れます。
  • 最小先端形状:突起や板など、支えのない部分を安全に造形できる最小サイズです。使うプリンターや素材による指定に合わせましょう。DMMのMJFの場合は0.8mmだそうです。
  • 解像度(長辺):Voxelizerのスライダーで指定する解像度です。

たとえば、長辺4cmでプリントしたい場合はこう

\frac{40}{0.8}={75}

この解像度をURLに入れて

https://drububu.com/miscellaneous/voxelizer/?out=stl&res=75

スライダーを右に振り切れば、ボクセル変換は完了です。

右下に2つある小さいスライダーを両方とも右に振り切ってから、「save as stl」を押してSTLファイルをダウンロードしましょう。

小さいスライダーは、左がシェルの厚み、右がボックスの大きさです。

※2020/3/16時点では、ChromeだとUIがうまく表示できないようです。SafariとEdgeなら動くことを確認しました。

プリント用にリサイズする

出力データは長辺が100mmになっているので、実際プリントするサイズに変更しましょう。ここではFlashprintを使いますが、3Dデータのスケール機能があるソフトならなんでもOKです。

長辺を4cmにしたいので、STLファイルを開いてモデルを選択し、「スケール」のメニューで、いちばん数字が大きい軸を40mmにします。

そうしたら、「名前を付けて保存」から、拡張子を「.stl」にして保存しましょう

DMM makeでプリントしてみる

※あらかじめDMMのアカウントを作って、ログインしておいてください。

DMM makeのページを開いて

make.dmm.com

このボタンを押して、さっき作ったデータをアップロードします。

自動でデータチェックしてくれるので、完了するまでしばらく待ちます。

チェックを通るとこんな表示になるので、「注文に進む」を押しましょう。

すると注文画面に行くので、ここでそれぞれの素材の見積もり結果を確認できます。

MJFを選ぶと1,717円とのこと。あとは普通の通販と同様、送り先や支払情報を入れていけば注文できます。

この記事を書くためだけなので、ちょっと躊躇する値段ですが、まあいいでしょう。

ポチッと。

プリント結果は

そうして待つことちょうど一週間、届きました!

直径4cmのアポロ、とっても可愛いです。

f:id:at_you_key:20200421195411j:plain

ちゃんと中の構造もそれっぽくプリントできていますが、暗くて見えませね。

もうちょっとディティールがわかりやすいモデルにすれば良かったなぁ...。

以上、複雑な3Dモデルを、ボクセル変換経由で手軽にミニチュア3Dプリントする方法でした。