木材NC加工サービスの「EMARF」を利用して、ホームシアターのセンタースピーカーYAMAHA NS-C120用のスタンドをつくった話—

さて、すこし前のこと、ホームシアターのセンタースピーカー用に、スピーカースタンドを買おうと考えました。

うちのホームシアターは、中古品の寄せあつめで格安セットアップしていて、センタースピーカーには3,000円ほどで手に入れたヤマハ NS-C120を使っています。

jp.yamaha.com

この機種、そこそこ人気だったようで、中古市場にたくさん出回っているので、状態が良いものでも手頃な値段で見つかります。

※状態が良いと言っても、ウレタンエッジの経年劣化は避けられないので、4インチユニット用の安いエッジを買って張り替えました。

話がそれましたが、このスピーカー、いままで仮置きとか言い訳して適当に床に転がしていて、そろそろなんとかしようと重い腰を上げたわけです。

ところが、いざ探してみると、センタースピーカー用スタンドって選択肢があまり有りません。

そもそもセンタースピーカーってテレビ台に置くことが多いようで、単体のスタンドは、あってもいい値段するわりに無骨なデザインのものばかり。

気にいるデザインの製品がないなら、それは作るしかないか。

音響も少し考えてデザインする

せっかくオリジナルのスタンドを設計するので、見た目だけではなく、少しはスピーカー配置の最適化も考えてみます。

そこでまず、オーディオのセッティング方法について調べると、山ほどの"正しいセッティング"が出てきます。センタースピーカーの場合だけをとっても

  • 高さをスクリーンの真ん中になるべく近づける派
  • メインスピーカーと高さを合わせるのが最優先派
  • 耳の高さに向けて角度をつける派
  • 角度をつけないほうが良い派
  • センタースピーカーは良いのを選ぶ派
  • そもそもセンタースピーカー不要派

などなどなどなど、多様な宗派があって、調べれば調べるほどわからなくなってきます。

音響の良し悪しっていうのは、位相や定在波の問題のように、物理的に明らかに音が劣化するものもありますが、それ以外は自分の好みやコンディションの影響が大きいので、自分で試聴してよければそれでよしとするのが良いと思います。

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そういう考えで、実際スピーカーを置いて聴き比べてみた結果、採用したのはこの2派です。

  • 高さはスクリーンの真ん中になるべく近づける(下端につける)
  • 座った時の耳の高さに向けて角度をつける

デザインが決まった

真っ直ぐ耳に向けると少しダイレクトすぎる感じがしたので、耳よりも10cmくらい下を狙う角度にしました。

デザインは、なんとなくミッドセンチュリーモダン家具のイメージで、シュッとしつつビシッとしすぎない感じを目指しました。

EMARFを利用してみたい

タイトルにもあるように、今回はNC加工サービスの「EMARF」を利用してみたかったので、EMARFで選べる、21mm厚の板の組み合わせで作れるデザインにしました。

EMARFは「プリントアウトするように家具を作ろう」というコンセプトで、その言葉の通り、デザインを入稿するとその通りに木材をNC加工して配送してくれるというサービスです。

emarf.co

組み継ぎの設計が初めてだったので、暗闇手探りスタートかと思いきや、EMARFスターターキット(EMARFにログインすると無料でダウンロードできる)付属のマニュアルに、手順やコツが丁寧に解説されていたので、これを参考にしたら特に迷うことなく設計することができました。

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Fusion360→iOSのAR表示でデザイン確認が有能

ARとはAugmented Reality(拡張現実)の略で、現実の映像に3DCGなど仮想の映像を重ねる技術のことです。

じつは、iOSには標準でこの機能が備わっていて、USDZというファイル形式の3DデータをARビューで見ることができます。

developer.apple.com

「USDZ」ってあんまり聞きなれないファイル形式ですが、なんとFusion360から簡単にエクスポートできます。

特に、こういうある程度の大きさで、かつ斜めの部分があるものを作るとき、CADの画面で作業していると、パースやサイズ感がなかなか掴みづらいです。

そうすると、実際作って置いてみたとき、画面で見てたのと微妙に雰囲気が違うなってなりがちです。

そこでこのAR、ほら、これはわかりやすい!

twitter.com

USDZファイル書き出し→AirDropやiCloudでiPhoneに送って即ARプレビュー→デザイン修正→EMARFに入稿というワークフロー、これぞデジファブの醍醐味という感じ。

EMARFに発注する

満足のいくデザインが仕上がったら、いよいよ発注です。

パーツはひとつのdxfファイルにまとめる必要があるので、今回はFusion360からエクスポートしたdxfをInkscapeでまとめました。

レイアウトはEMARFにアップロードしてから調整できるので、この時点では重ならないように置けばOKです。

ファイルが用意できたら、EMARFにログインしてdxfファイルをアップロードします。アップロード画面に注意事項などが色々書かれているので、初回はよく読みましょう。

ファイルをアップロードするとまず板厚を聞かれます、今回は21mm。

次の画面でレイアウトを編集します。 ちゃんと島毎に個別のパーツとして認識してくれるので、マウスで移動・回転して良い感じに配置します。

加工範囲外や切りしろがかぶると、表示が赤くなって教えてくれて親切です。

EMARFではサブロク板の半分が材料の最小単位のようなので、半分単位に収まるように並べるとコスパが良いと思います。

それと、合板は長手方向に木目が入るので、木目の見える仕上げにする場合はそこも意識した方が良いです。

あとは板の種類を選べば、すぐに自動見積もりの結果が確認できます。板厚によって選べる材が変わります。21mmだと選択肢はやや少なめ。

今回はラワン芯ラワン合板を選びました。

スピーカー1台分だとサブロク板半分も使わなくて、イニシャルコストが割高なので、予備という名目で2セットにしてみました。

注文をかけて少し待つと詳細見積もりのメールが来ます。今回は送料・梱包費が2,400円ほど、あと消費税がかかって1万6千円ほどでした。

こういう小物だとやや割高感はありますが、自分で21mmの板を買って加工して端材を処分する手間を考えたら、まあじゅうぶん割に合いますね。

それに、一般的なセンタースピーカースタンドが結構良い値段するので、特注品でこの値段ならむしろ安いくらいかもしれません。

金額が確定したら代金を振り込んで、1週間ほどで手元に届きました。

ロゴ入りテープの梱包がイケてます。

CADで描いたものが立体になるのは、3Dプリントで慣れているはずですが、3Dプリントできない木材が図面通り仕上がってくるのは新鮮な感じです。

バリ取りと表面処理のオプションは付けなかったので、やすりがけは手作業、頑張りどころです。

最後は塗装です。暗めのグレーにしたかったんですが、ぴったりの色が見つからなかったので、黒とグレーを買って調色しました。

イメージ通りの色になりました。

あ、最近スポンジ刷毛というのを知りました。安くて綺麗に塗れて手入れも簡単、耐久性が低いのだけがデメリットですが、僕の場合は使用頻度が低いので、圧倒的にメリット大で気に入って使っています。

完成!

そして完成したのがこちら。

ARを活用した甲斐あって、デザインはバッチリ期待通りになりました!

音のほうはどうだったかというと、そもそも元の置き方が悪かったので、明らかに音が明瞭になって聴きやすくなりました!

というわけで、結果良いことづくめだったよということで、新年最初の記事を締めたいと思います。本年も当ブログをよろしくお願いします。