最近、ZINE的な手法でワークショップ用のテキスト用の小冊子を作る機会があったので、そのときの手順をご紹介しようと思います。
ZINEとは?
個人が趣味で作る雑誌のことだそうです、日本語で言うところの「同人誌」ですね。
自分の好きな物事についてまとめ、ざっくりと製本して、ミニマムに流通するという文化だと理解しました。今回作るのも、広義でそういうものです。
- ZINEとは?
- 原稿はMarkdownで書きたい
- マークダウンエディタ「Typora」を使う
- PDFで書き出す
- Acrobatで面付け&印刷
- 紙選び
- 中綴じ製本のマストアイテム、MAXの「ナカトジール」
- Google翻訳で英語版も作る
原稿はMarkdownで書きたい
文章を書くことに集中したかったので、原稿はMarkdownで書くことにしました。
Markdownというのは文章の書き方のルールみたいなもので、このルールにそってプレーンテキストを書けば、対応するソフトで変換することで、簡単に見栄えの良いドキュメントを作ることができます。
今回は英語版も作る必要があったので、MarkdownならまるごとGoogle翻訳に通せるんじゃないか?という期待もありました。
マークダウンエディタ「Typora」を使う
Markdownはプレーンテキストなので、編集はどんなエディタでもできるんですが、専用エディタを使うと快適に執筆することができます。
今回は、使い心地最強(主観)のMarkdownエディタ、「Typora」を使っていきます。
HTMLやPDFに書き出す機能もあるので、紙面の体裁までこのソフトで決めてしまおうと思います。
※ちゃんと組版したい場合は、もっとDTP寄りなソフトを使いましょう。
テーマを選ぶ
「テーマ」から装飾テーマを切り替えることができるので、好きな見た目を選びましょう。
内蔵のテーマ以外にも色々あって、テーマギャラリーからインストールすることができます。ヘルプの「About Themes」に詳しい説明があるので、そちらを見てみてください。
今回は、シンプルですっきりした見た目の「Catfish(ナマズ)」というテーマを選びました。
きれいな日本語フォントを使いたい
Catfishテーマでは、Source Han Sans SC
という簡体字中国語フォントが指定されているので、漢字が簡体字になってしまい、違和感があります。
そこで、テーマをカスタマイズして、日本語フォントに切り替えたいと思います。
テーマのカスタマイズ方法はヘルプの「About Themes」→「Modify Current Styles」にある通り、 テーマフォルダに テーマ名.user.css
というファイルを作ると、cssでスタイルを上書きできます。
ここでfont-family
を、ヒラギノとかメイリオとか、お好きなフォントに変えれば良いわけです。
今回は、Googleが提供してくれているきれいなWebフォント「Noto Sans JP」を使ってみようと思います。
さっそくthemesフォルダにcatfish.user.css
を作って、"Noto Sans JP"の指定を書きます。
ついでに、白黒印刷するので、文字色を黒にしておきました(catfishのデフォルト色は濃いグレーです)。
@import url("https://fonts.googleapis.com/css?family=Noto+Sans+JP&display=swap"); * { font-family: "Noto Sans JP"; color: black; }
Typoraのテーマ選択でCatfishを選び直すと...
少しの変化ですが、雰囲気はだいぶ変わったと思います。
サクッと挿絵
文章だけだと味気ないので、ボールペンで手描きしたイラストを「Adobe Capture」というアプリで取り込んで、挿絵にしてみました。
なんとも味のある線画になります。
ちなみに、画像を挿入するとき、挿入メニューからMarkdown書式で貼るとサイズ指定ができません。 TyporaはHTMLも解釈してくれるので、imgタグを使います。
<img src="./IMG-9197.png" height="200px">
改ページはインラインcssで入れる
改ページもHTMLで書きます。改ページしたいところにこう書きましょう。
<div style="page-break-after: always"></div>
※ もっと良い改ページの入れ方を書きました! www.creativity-ape.com
ページ数に注意
A5の小冊子にする場合、A4用紙を2つ折りにして中綴じすることになります。
ということは、A4用紙一枚に表裏で4ページ刷ることになるので、表紙を含めて4の倍数ページになるようにしてあげる必要があります。
今回のテキストは12ページになったので、用紙3枚分ですね。
PDFで書き出す
ファイルメニューの「エクスポート」からPDFを選択するとPDFが書き出されますが、残念ながら細かい設定が無くてA4縦フォーマット固定です。
今回はA5にしたいのと、余白の設定もいじりたいのでこの手は使えません。
少し面倒ですが、エクスポートからHTMLで書き出したものを、Google ChromeでPDFに変換しました。
印刷メニューの送信先に「PDFに保存」があります。詳細設定でA5用紙を指定し、余白も調整します。
Webフォントの反映がうまく行かない ←修正されてた!
※久々にやったら、最新版のTyporaでは修正されてました。なのでこの操作は不要です。
さて、書き出したものを確認すると...なぜかさっき指定したフォントが反映されていません。メイリオになっている?
しばらくハマった結果、どうやらHTMLで書き出す時に、フォントのインポートの設定が外れてしまうらしいということがわかりました。
仕方がないので、応急処置として書き出したHTMLの<head>
に追記します。
<meta>
タグの次の行に入れると良いと思います。
<!doctype html> <html> <head> <meta charset='UTF-8'><meta name='viewport' content='width=device-width initial-scale=1'> <link href="https://fonts.googleapis.com/css?family=Noto+Sans+JP&display=swap" rel="stylesheet"> ・・・
上書き保存したらChromeで開き直し、フォントが反映されていることを確認してPDFに書き出します。
Acrobatで面付け&印刷
ここまでくればあとは簡単です。
PDFをAcrobatで開いて、印刷設定で「小冊子」を選ぶと、勝手に中綴じの面付けをやってくれます。
プリンタ設定を余白無しにして両面印刷で印刷しましょう。
両面印刷非対応のプリンターを使う場合は、表面/裏面のみ印刷のオプションがあるので、片面づつ印刷しましょう。
紙選び
そうそう、コピー用紙だとペラペラすぎるので、もう少し厚みのある紙を選びたいところ。
A4×3シートの中綴じZINE向きで、コピー用紙より厚くて程々の厚み、かつ安い紙という条件で、今回は105g/m2の両面印刷用マットコート紙を選定しました。
ほどほどにコシがありつつ、手折りでシワにならないので、これくらいがちょうど良いところだと思います。
あとは、お好みでもう少し厚い/薄いものを選ぶと良いと思いますが、さ紙の厚みには2種類の表記方法があって、メーカーによってどちらで書かれているかまちまちです。
- 連量(kg)
- 原紙1,000枚あたりの重さ
- 質量(g/m2)
- 1平方メートル辺りの重さ
富士ゼロックスのサイトに換算表があったので、これが助けになると思います。
中綴じ製本のマストアイテム、MAXの「ナカトジール」
自分で中綴じ製本する方法を検索すると、100均の中綴じ用ホッチキスが人気のようですが、プラス200円で買えるMAXの中綴じガイド定規「ナカトジール」が圧倒的におすすめです。
ゆるゆるなネーミングなので正直舐めていましたが、実力はスゴいです。
どれくらいスゴいかは近々追記するとして、英語版の原稿も用意しておきましょう。
Google翻訳で英語版も作る
※Markdownを直接Google翻訳にかける方法は、結局うまくいきませんでした。
途中の工程で作ったHTMLを翻訳する方法でいきます。
まずChromeに、Google翻訳拡張を追加しておきましょう。 chrome.google.com
HTMLファイルを開いて、右クリックメニューの「日本語に翻訳」をクリックします。
すかさずオプションをクリックし、翻訳言語を日本語→英語にしましょう。
本文が翻訳されます。
内容をチェックしてみて、大丈夫ならこのままPDFに書き出しても良し、手直しが必要ならこれを元に原稿を起こしても良しです。
というわけで、今日はここまで。