Markdownで書いた原稿からA5サイズのZINE的中綴じ小冊子を作る方法のメモ

最近、ZINE的な手法でワークショップ用のテキスト用の小冊子を作る機会があったので、そのときの手順をご紹介しようと思います。

ZINEとは?

個人が趣味で作る雑誌のことだそうです、日本語で言うところの「同人誌」ですね。

www.fuze.dj

自分の好きな物事についてまとめ、ざっくりと製本して、ミニマムに流通するという文化だと理解しました。今回作るのも、広義でそういうものです。

原稿はMarkdownで書きたい

文章を書くことに集中したかったので、原稿はMarkdownで書くことにしました。

www.markdown.jp

Markdownというのは文章の書き方のルールみたいなもので、このルールにそってプレーンテキストを書けば、対応するソフトで変換することで、簡単に見栄えの良いドキュメントを作ることができます。

今回は英語版も作る必要があったので、MarkdownならまるごとGoogle翻訳に通せるんじゃないか?という期待もありました。

マークダウンエディタ「Typora」を使う

Markdownはプレーンテキストなので、編集はどんなエディタでもできるんですが、専用エディタを使うと快適に執筆することができます。

今回は、使い心地最強(主観)のMarkdownエディタ、「Typora」を使っていきます。

qiita.com

HTMLやPDFに書き出す機能もあるので、紙面の体裁までこのソフトで決めてしまおうと思います。

※ちゃんと組版したい場合は、もっとDTP寄りなソフトを使いましょう。

テーマを選ぶ

「テーマ」から装飾テーマを切り替えることができるので、好きな見た目を選びましょう。

内蔵のテーマ以外にも色々あって、テーマギャラリーからインストールすることができます。ヘルプの「About Themes」に詳しい説明があるので、そちらを見てみてください。

support.typora.io

今回は、シンプルですっきりした見た目の「Catfish(ナマズ)」というテーマを選びました。

theme.typora.io

きれいな日本語フォントを使いたい

Catfishテーマでは、Source Han Sans SCという簡体字中国語フォントが指定されているので、漢字が簡体字になってしまい、違和感があります。

そこで、テーマをカスタマイズして、日本語フォントに切り替えたいと思います。

テーマのカスタマイズ方法はヘルプの「About Themes」→「Modify Current Styles」にある通り、 テーマフォルダに テーマ名.user.cssというファイルを作ると、cssでスタイルを上書きできます。

support.typora.io

ここでfont-familyを、ヒラギノとかメイリオとか、お好きなフォントに変えれば良いわけです。

今回は、Googleが提供してくれているきれいなWebフォント「Noto Sans JP」を使ってみようと思います。

fonts.google.com

さっそくthemesフォルダにcatfish.user.cssを作って、"Noto Sans JP"の指定を書きます。

ついでに、白黒印刷するので、文字色を黒にしておきました(catfishのデフォルト色は濃いグレーです)。

@import url("https://fonts.googleapis.com/css?family=Noto+Sans+JP&display=swap");

* {
  font-family: "Noto Sans JP";
  color: black;
}

Typoraのテーマ選択でCatfishを選び直すと...

変わった!

少しの変化ですが、雰囲気はだいぶ変わったと思います。

サクッと挿絵

文章だけだと味気ないので、ボールペンで手描きしたイラストを「Adobe Capture」というアプリで取り込んで、挿絵にしてみました。

これを

こう

なんとも味のある線画になります。

ちなみに、画像を挿入するとき、挿入メニューからMarkdown書式で貼るとサイズ指定ができません。 TyporaはHTMLも解釈してくれるので、imgタグを使います。

<img src="./IMG-9197.png" height="200px">

改ページはインラインcssで入れる

改ページもHTMLで書きます。改ページしたいところにこう書きましょう。

<div style="page-break-after: always"></div>

※ もっと良い改ページの入れ方を書きました! www.creativity-ape.com

ページ数に注意

A5の小冊子にする場合、A4用紙を2つ折りにして中綴じすることになります。

ということは、A4用紙一枚に表裏で4ページ刷ることになるので、表紙を含めて4の倍数ページになるようにしてあげる必要があります。

今回のテキストは12ページになったので、用紙3枚分ですね。

PDFで書き出す

ファイルメニューの「エクスポート」からPDFを選択するとPDFが書き出されますが、残念ながら細かい設定が無くてA4縦フォーマット固定です。

今回はA5にしたいのと、余白の設定もいじりたいのでこの手は使えません。

少し面倒ですが、エクスポートからHTMLで書き出したものを、Google ChromeでPDFに変換しました。

印刷メニューの送信先に「PDFに保存」があります。詳細設定でA5用紙を指定し、余白も調整します。

Webフォントの反映がうまく行かない ←修正されてた!

※久々にやったら、最新版のTyporaでは修正されてました。なのでこの操作は不要です。

さて、書き出したものを確認すると...なぜかさっき指定したフォントが反映されていません。メイリオになっている?

しばらくハマった結果、どうやらHTMLで書き出す時に、フォントのインポートの設定が外れてしまうらしいということがわかりました。

仕方がないので、応急処置として書き出したHTMLの<head>に追記します。

<meta>タグの次の行に入れると良いと思います。

<!doctype html>
<html>
<head>
<meta charset='UTF-8'><meta name='viewport' content='width=device-width initial-scale=1'>
<link href="https://fonts.googleapis.com/css?family=Noto+Sans+JP&display=swap" rel="stylesheet">
・・・

上書き保存したらChromeで開き直し、フォントが反映されていることを確認してPDFに書き出します。

Acrobatで面付け&印刷

ここまでくればあとは簡単です。

PDFをAcrobatで開いて、印刷設定で「小冊子」を選ぶと、勝手に中綴じの面付けをやってくれます。

プリンタ設定を余白無しにして両面印刷で印刷しましょう。

両面印刷非対応のプリンターを使う場合は、表面/裏面のみ印刷のオプションがあるので、片面づつ印刷しましょう。

紙選び

そうそう、コピー用紙だとペラペラすぎるので、もう少し厚みのある紙を選びたいところ。

A4×3シートの中綴じZINE向きで、コピー用紙より厚くて程々の厚み、かつ安い紙という条件で、今回は105g/m2の両面印刷用マットコート紙を選定しました。

ほどほどにコシがありつつ、手折りでシワにならないので、これくらいがちょうど良いところだと思います。

あとは、お好みでもう少し厚い/薄いものを選ぶと良いと思いますが、さ紙の厚みには2種類の表記方法があって、メーカーによってどちらで書かれているかまちまちです。

  • 連量(kg)
    • 原紙1,000枚あたりの重さ
  • 質量(g/m2)
    • 1平方メートル辺りの重さ

富士ゼロックスのサイトに換算表があったので、これが助けになると思います。

www.fujixerox.co.jp

中綴じ製本のマストアイテム、MAXの「ナカトジール」

自分で中綴じ製本する方法を検索すると、100均の中綴じ用ホッチキスが人気のようですが、プラス200円で買えるMAXの中綴じガイド定規「ナカトジール」が圧倒的におすすめです。

ゆるゆるなネーミングなので正直舐めていましたが、実力はスゴいです。

どれくらいスゴいかは近々追記するとして、英語版の原稿も用意しておきましょう。

Google翻訳で英語版も作る

※Markdownを直接Google翻訳にかける方法は、結局うまくいきませんでした。

途中の工程で作ったHTMLを翻訳する方法でいきます。

まずChromeに、Google翻訳拡張を追加しておきましょう。 chrome.google.com

HTMLファイルを開いて、右クリックメニューの「日本語に翻訳」をクリックします。

すると、「翻訳できませんでした」と言われるので

すかさずオプションをクリックし、翻訳言語を日本語→英語にしましょう。

本文が翻訳されます。

内容をチェックしてみて、大丈夫ならこのままPDFに書き出しても良し、手直しが必要ならこれを元に原稿を起こしても良しです。

というわけで、今日はここまで。